2024年「かしの木」4月号

カ ト リ ッ ク信 者 の処 方 箋

詩編を祈る、詩編で祈る

 

主任司祭  矢 野 𠮷 久

 

主イエス・キリストのご復活おめでとうございます!

ご復活のお祝いは復活徹夜祭から始まります。教会のもっとも大切な時、典礼歴の中心です。

よみがえられたキリストをあらわす復活の大ローソクに火が灯され、復活の賛歌が歌われます。次いで旧約聖書と使徒書の朗読を聞き神の人類への救いの出来事を思いめぐらします。使徒書の後、いよいよ四旬節中控えていた“アレルヤ”(主を賛美せよ!)を詩編 118 と共にみんなで大きな声で歌います。キリスト復活!まことに復活!の思いをこめて。

 

その詩編 118 ですが、元々は旧約時代祭日にエルサレムの神殿で行われた感謝の行列の歌と伝えられ

ています。「神に感謝せよ。神はいつくしみ深く、そのあわれみは永遠」で始まり 29 節まで続きます。少年イエスもこの詩編を歌い感謝のうちに育ったことでしょう。やがて新しい民を感謝のうちに招き導かれます。

ミサの中ではこの詩編の 1.2 節 16.17 節 22.23 節が歌われます。1.2 節に、「神に感謝せよ。神はいつ

くしみ深く、そのあわれみは永遠。イスラエルよ(神の民よ)、叫べ。神のいつくしみは永遠」とあり、その意味は、神様はよいかた、神様のいつくしみはかわることがない!

16.17 節「神の右の手は高くあがり、その右の手は力を示す。私は死なず、私は生きる、神のわざを告げるために。」右の手とはわたしたちのために復活したキリスト、死を超えて生きるキリストを思います。私たちも苦しみを超え、神様に守られていることを思い歌います。

この詩編の中心とも言える個所は次の 22.23 節です。「家造りの捨てた石が、もっともたいせつな石と

なった。これは神のわざ、人の目には不思議なこと。」この石は、“隅のかしら石”のこと、礎石ではなく、建築の終わりに隅の押えとして壁の上端にすえられる石のこと。背景にはこの詩編が作られた頃(旧約時代)イスラエルは同盟国から捨てられたことがあり、原作の詩人はやがてイスラエルは世界の中で中心となるという思いで作ったのです。そして新約の教会は、人々から裏切られ、捨てられたイエス・キリストご自身にあてはめ十字架の死を過越し復活されたイエス・キリストをたたえ、復活のミサの中で歌います。世の中に、捨てられた石のような目にあって来た方々がおられます。その捨てられた石のような方々がもっとも大切な石となるのだということをこの詩編は教えてくれています。

 

祈りましょう。